『起業家戦略には四つある。総力戦略、ゲリラ戦略、ニッチ戦略、顧客創造戦略である。』
P.F.ドラッカー,チェンジリーダーの条件Part5・4章

※前回からの続きです
③ニッチ戦略
ニッチ戦略には三つ(①関所戦略②専門技術戦略③専門市場戦略)あります。それぞれに特有の条件、限界、リスクがあります。
◯総力戦略、創造的模倣戦略の特徴
- 市場でトップの地位を目指す
- 大きな市場や業界で支配的な地位を占めようとする
- レッドウォーシャンが前提
- 成功すれば大企業になり、目立つ存在になる
◯ニッチ戦略の特徴
- 隙間(ニッチ)の占拠を目指し、目標を限定する
- 限定された領域で実質的な独占を目指す
- ブルーウォーシャンを目指す
- 成功しても名をあげることはない(実をとるだけ)
❶関所戦略
(例)アルコン・ラボラトリーズ
一般的な老人性白内障の手術で、手術時間がかかる原因になっていたプロセスを取り除く酵素を開発し、特許を取得した。特許を取得したことで、その酵素は関所の地位を得た。手術に使う酵素小さじ一杯は、高額であっても手術費用全体からすればごくわずか。市場は小さいので、競合品を開発するほどの価値はない。価格を下げても白内障の手術が増えるわけでもない。
◯関所戦略の条件
製品が、そのプロセスにおいて不可欠なものでなければなりません。例のように失明のリスクに伴うコストが、製品価格よりも圧倒的に大きくなければなりません。そして、市場の規模は最初にその場を占めた者1人だけが占拠できる大きさでなければなりません。1社だけが独占でき、あまりに小さく目立たないために、競争相手が現れようがないのです。
◯関所戦略の限界とリスク
ひとたび適所を占めてしまえば、大きな成長は見込めません。いかに優れ、安かったとしても、需要が増えるわけではないので、関所の地位を占めた企業が、勝手に事業を拡大したり、変えたりすることはできません。ひとたび目標を達成すれば、すでに成熟期を迎えています。最終需要者の成長と同じ速さでしか成長できません。
関所戦略をとった企業は、その独占を濫用することができません。独占を濫用して顧客を搾取するようなことをすれば、ユーザーは別のメーカーを探し始めます。あるいは、たとえ優れていなくても、他の製品に切り替えようとしてしまいます。
関所戦略では競争相手といえども、できることはせいぜい世の中のために価格を下げることであって、自ら利益を上げることはできません。関所の地位は望ましい場所ですが、関所的な場所は簡単に見つからないのも事実です。
※次回に続きます