『充実による満足と無関心による満足とを区別しえない。何事にも不満である者と、よりよい仕事を行いたいが故の不満を区別しえない。また、いかなる程度の満足を満足として是とすべきかを知るための基準を持たない。』

P.F.ドラッカー,現代の経営【下】第23章
代表取締役 瀧野 雅一

「この会社で満足していますか?」との問いに対して70%の人が「はい」と答えたとします。この場合の満足度は高いのでしょうか低いのでしょうか。それともどちらでもないのでしょうか。質問そのものが何を聞こうとしているのでしょうか。そもそも「はい」「いいえ」で答えられるものでしょうか。

 働く人から最高の仕事を引き出すためにはどんな動機づけが必要でしょうか。一般的には従業員の満足度の高低が影響していると信じられています。しかし、ドラッカーは『満足は動機づけとして間違っている』と言っています。

満足と不満
  1. 仕事で何かを達成しているので満足している (プラスの満足)
  2. 大過なく過ごせるので満足している (マイナスの満足)
  3. より優れた仕事をしたいための不満 (プラスの不満)
  4. 何事にも不満を持つ (マイナスの不満)

 ③のような不満は、会社にとって価値のある不満です。しかし、③と④の不満を区別することはなかなか出来ません。

 ①と②の区別も同じです。満足とは受身の気持ちです。たしかに、強い不満を持つ人は辞めていきます。辞めなければ不満を持ち続け、会社に背を向けます。

 それでは、満足している人は何をしてくれるのでしょうか。要するに、会社は働く人に対し、進んで何かを行うことを要求しなければなりません。それは仕事です。仕事において意味のあるものは『責任』であって、満足・不満という受身の気持ちではないのです。

 他人が行うことについては満足もありえます。しかし、自らが考え、意思決定をし、自らが行動することについては『責任』が発生するのです。そして、自ら行動することについては常により良くしようとする欲求がなければならず、常に不満がなければならないのです。

 ただし、『責任』はお金で買うことはできません。金銭的な報酬の不満は仕事に対する責任感を低下させます。とは言っても、金銭的な報酬の満足が積極的な動機づけとしては十分ではありません。金銭的な動機づけとして機能するのは、より良い仕事をする気持ちを持ち、仕事に対する『責任』を持つ用意がある時だけなのです。

 企業は事業で業績をあげなから、社会に貢献することが必要です。とすると、そこで働く人が『責任』を欲しようと欲しまいと、働く人に対しては責任を要求しなければならないのです。企業は働く人に対し、責任を持つよう励まし、必要ならば強く要求することで仕事が業績に貢献できるようにする必要があるのです。

 次回は、仕事で責任を持たせる方法
①人の正しい配置②仕事の高い基準③自己管理に必要な情報④マネジメント視点をもたせる機会について詳しく説明したいと思います。