『今日のマネジメントは、明日の経営管理者を体系的に育成しておかなければならない。』

P.F.ドラッカー,現代の経営《上》 第8章
代表取締役 瀧野 雅一

 マネジメントは将来を予期し、将来をより良く変えようとし、短期的な目標と長期的な目標をバランスさせなければなりません。誰もが容易にできるわけではありませんが、マネジメントはそれらの責任から免れることはできないのです。

 5年先、10年先についての予測は常に推測にとどまります。しかし、知的な推測とヤマ勘は違います。起こりうる可能性の合理的な評価に基づく推測と賭けにすぎない推測の間には、大きな違いがあるのです。

 事業計画を立てる際、経済情勢を無視するわけにはいきません。事業の中での意思決定でも、好況時に実施した場合と不況時に実施した場合では、その有効性や成否は大きく異なります。

 しかし、『不況の底で投資をし、好況のピークでは拡張を避けましょう』というアドバイスは、株で言うと『安く買って、高く売りましょう』ということと同じで、現在の景気循環はどの段階にあるのかは誰にも分かりません。そのようなアドバイスに従うことが不可能だからこそ、極端な景気循環が起こります。

 そもそもみんながこのアドバイスを聞けば、好不況はなくなるかもしれません。確かに好不況はあります。しかし景気循環は多くの変動要因の総合で、事後に分析結果が可能となるのです。

 それでは、景気循環を迂回して意思決定を行うにはどうすれば良いでしょうか?

 ドラッカーは、『すでに起こった未来を探せ』と言います。それは、すでに起こってはいるが、経済への影響がまだ現れていない事象に基づいて、意思決定を行うことを言います。例えば、人口構造の変化です。2018年度の出生数は約92万人です。したがって6年後の小学1年生も約92万人ということになります。2025年には65歳以上の人口が30%(内閣府の推計)となり、2人で1人の高齢者を支える社会がきます。ほかにも法律が改正された時や、新しい技術が開発された時などがあります。

 いずれにしても、将来に関わる意思決定は推測に過ぎません。しかも推測は間違うことの方が多いので、変更、適応、応急処置の準備をしておくことが大切です。

 経営管理者の育成に関しては、明日の決定を行うことができる経営管理者の育成を課題にしがちです。それももちろん正しいことです。しかし、体系的な経営管理者の育成は、今日行った決定のフォローのために必要です。今日行った決定を明日の情勢に適応させて、予測を現実の業績に結びつける経営管理者の育成が必要です。