『マネジメントとは意思決定のプロセスである』

P.F.ドラッカー,現代の経営《下》 第28章
代表取締役 瀧野 雅一

 経営管理者は、あらゆることを意思決定を通して行います。意思決定は日常業務として行われているので、意思決定を行なっていることに気づかないこともあります。

 会社の存続を左右するような意思決定もあります。意思決定には戦術的なものと戦略的なものがあるのです。多くの会社では戦略と戦術と区別しないまま、経営を行なっています。

◎戦略的な意思決定
  • 事業の目的や手段について
  • 大規模な資本支出
  • 生産性に影響するあらゆるもの
  • 組織に関わるもの
  • 工場のレイアウト
  • 販売エリアの決定 など
◎戦術的な意思決定
  • 目標を達成するための具体的な手段や実行計画

 戦術的な意思決定の簡単な例では、『コーヒーブレイクの必要性』の問題があります。
 ① コーヒーブレイクは仕事にとってプラスかマイナスか。つまり、失われた労働時間を上回る勤労意欲がもたらされるか。
 ② 数分間の節約のために習慣を変える価値はあるか

 もちろん戦術的な意思決定は、この問題よりも重要です。しかし戦術的な意思決定は誰が行なっても誤差は少ないのです。

 一方、戦略的な意思決定は経営管理者が行ないます。戦略的な意思決定には状況を把握することが必要です。時には状況を変えることさえ必要です。

 戦略的な意思決定には、①問題の理解、②問題の分析、③解決案の作成、④解決策の選定、⑤効果的な実行、の5つの段階があります。

① 問題の理解

 仕事の上で、すぐに意思決定を行なえる問題などはあまりありません。したがって意思決定における最初の仕事は、問題を見つけることです。普段、問題だと思っていることは問題の兆候に過ぎないことがほとんどです。

 問題の根本原因を見つけるためには❶「何もしなければ何が起こるか」❷過去にさかのぼり「何ができたか」を自問自答してみることがお勧めです。

② 問題の分析

 意思決定の第二段階は問題の分析をすること、つまり問題を分類することです。誰が意思決定を行ない、誰が相談を受け、誰が知らされるべきか、を知るためには問題の分析によって問題の種類を知ることが必要です。

 問題の種類を知るには、その意思決定はどのくらいの期間にわたって行動を拘束するか(時間的要因)、その意思決定が他のどの部門まで影響をおよぼすか(影響度)、意思決定が反復して起こるか、稀にしか起こらないか(反復度)、などの問いで問題の種類を知ることが出来ます。問題の種類を知ることで、意思決定をより効果的に実行することが可能となるのです。