『知識が事業である。物やサービスは、企業が持つ知識と、顧客が持つ購買力との交換の媒体であるにすぎない。』

P.F.ドラッカー,創造する経営者 第7章
代表取締役 瀧野 雅一

 知識は、本に書かれていることではありません。本に書かれているものは情報です。知識とは、様々な情報を仕事や業績に結びつける能力のことです。事業を成功させるためには、知識が、顧客の満足や価値において意味のあるものでなければなりません。知識は、顧客や市場の最終用途に貢献してこそ有効になるのです。

 他社と同じような能力を持つだけでは、十分ではありません。卓越してなければなりません。

 なぜなら、卓越性だけが利益をもたらすからです。業績の差は差別化の結果で、顧客は同じような製品であれば安い方を買います。成功している企業には、少なくとも一つは際立った知識があるのです。

◯我が社の知識は卓越しているか?

 まず、2つの問いです。
❶他社はやっているが、我が社ではあえてやらないことは?
❷我が社ではできるが、他社にはできないことは?

 ❶は我が社のこだわりで❷は差別化です。この問いに答えられないようでは顧客から見て魅力的な会社には見えないでしょう。

 そして❸ その知識に対して報酬を受けているか?❹その知識は製品やサービスに組み込まれているか? との問いに向き合わなければなりません。

◯我が社の欠けているものは?

 そもそも、業績の上がっていた商品やサービスに代わるものの開発する努力をしているでしょうか? 機会と成功の追求をしているでしょうか?

 当たり前のことですが、知識が知識であり続けるためには、進歩していかなければなりません。常に再確認をし、再学習をし、再訓練をし、卓越性を強化していく必要があります。そもそも自社のこだわりや卓越性を知らずして、維持・強化できるわけもないのです。

 多くの知識で同時に卓越することはできません。「一つの領域で卓越することでさえ難しい」という会社は、生き残ることだけでもやっとで、かろうじて倒産や廃業を免れているに過ぎない場合もあります。

 マネジメントも人が行っている以上、全能ではありません。見落としもあるでしょう。しかし、体系的な努力を怠れば、明白なことでも見落としたり、誤った方向に向かいそうな兆候も見誤ってしまうのです。

 多くの領域で卓越できないまでも事業で業績を上げるためには、多くの領域で並以上でなければならないし、いくつかは有能でなければなりません。そして一つの領域では卓越しなければならないのです。