『未来を築くためにまず初めになすべきことは、明日何をなすかを決めることではなく、明日をつくるために今日何をなすかを決めることである。』

P.F.ドラッカー,創造する経営者・第11章
代表取締役 瀧野 雅一

 未来は予測できないので、何かをなそうとすればリスクが伴います。リスクをなくすことはできません。できることはリスクを回避することではなくて、リスクを適切にコントロールすることです。事業のマネジメントでは、負えるリスクの範囲内で行うことを考えなければなりません。

1.負えるリスク

 機会の追求に失敗して、多少の資金と労力が失われる程度のリスクが負えるリスクです。

 失敗した時、存続できないほどの多額の資金が失われるのであれば、もともとその機会は追求してはいけないのです。

2.負えないリスク

 負えないリスクは負えるリスクの反対で、機会の追求に失敗した時、会社が倒産してしまうような事業は負えないリスクです。

 もう一つの負えないリスクは、新事業でうまくいった場合、追加の資金が必要になります。資金不足が理由で成功の成果を利用できないならば、それも負えないリスクとなります。新事業への着手にあたっては小さな成功を大事業に発展させるための資金を調達できなければ、他社のための機会をつくるだけになってしまう場合があります。

3.負うべきリスク

 あらゆる産業で負うべきリスクはあります。極端な例ですが、医薬品メーカーの例で言うと、病気の症状を良くするための薬には必ず副作用があります。医薬品メーカーにとっては、薬の副作用は負うべきリスクとなるのです。

◯ビジョンを実現する

 未来において何かを起こすということは、新しい事業を作り出すということです。つまり、新しい社会についてのビジョンを事業として実現することです。

 大きなビジョンである必要はありませんが、ビジョンとは現在の常識とは違うものであることです。必ずしも創造性は必要ありません。必要なのは天才的な能力ではなく、仕事ができればいいのです。

◯廃棄から始めよ

 大きな成果を生まなくなった仕事は、止めることを原則としなければなりません。生産的でなくなったものを廃棄し、成果をあげられるものに希少な人材を集中させることです。

 『選択と集中』とは、廃棄することから始めなければなりません。

 新事業・投資・新製品のための提案などは、業績を上げるための計画に沿って行います。多様な人からなる組織の中で、業績を上げることを浸透させることは、簡単ではありません。

 しかし、計画を立て、詳細を定め、具体化を図り、成果を上げるためには真剣に取り組む経営管理者が、最低でも一人はいなければなりません。逆にいうと、一人でもいればいいのです。

 そして、経済的な成果は、景気の良し悪しによってもたらされるものではなく、人によって実現されるものなのです。