『あらゆる組織が3つの領域における成果を必要とする。すなわち、直接の成果、価値への取り組み、人材の育成である。これらすべてにおいて成果をあげなければ、組織は腐り、やがて死ぬ。したがって、この3つの領域における貢献をあらゆる仕事に組み込んでおかなければならない。』

P.F.ドラッカー,経営者の条件 ・第3章
代表取締役 瀧野 雅一

 成果をあげるために身につけなければならない5つの習慣の2つ目は『貢献を重視する』ことです。組織の成果に影響を与える自らなすべきこと、つまり貢献に焦点を合わせることが仕事で成果をあげる鍵となります。

 しかし、成果ではなく努力に焦点を合わせたり、組織や上司が自分にしてくれることを気にしたり、自らが持つ権限ばかりを気にしていても成果は上がりません。権限とは自分が誰かの部下であることを示しているにすぎません。

3つの領域における成果

 第一の領域である『直接の成果』は、企業であれば売り上げや利益、客数や客単価、リピート率など経営上の業績です。病院においては患者の治癒率などです。NPOのように直接の成果が明確なものばかりではありませんが、直接的な成果が混乱している状態では、成果は期待できません。

第二の領域である『価値への取り組み』とは、お客様が購入してくれる理由を提供することです。
・基本的価値
 食堂で例えれば、『美味しい』ということです。インスタ映えしたとしても美味しくなければだれも買ってはくれません。
・付加的価値
 『早い』とか『お店の雰囲気』とかです。
・社会的価値
『地産地消』などです。

 第三の領域が『人材の育成』です。顧客の要求水準や組織内での新しい役割や部門、新しい地位(職責)での要求水準に応じられるよう自ら進化させなければなりません。貢献すべき成果そのものが変化しているので、それまで成功してきた貢献を続けていてもうまくいかないのです。

(図)成果を拡大する
Q1 組織の成果は何ですか?
Q2 組織が成果をあげるためにあなたが貢献すべきことは何ですか?
Q3 あなたの得意なこと、強みは何ですか?

 ドラッカーは、言われたこと以上の仕事をする人を『知識労働者(ナレッジワーカー)』と言い、言われたこと通りに働く人を『マニュアルワーカー』と言っています。『知識労働者』が生産するのは、物ではなくアイデアや情報やコンセプトです。その知識労働者は対人関係の能力を持つことによって人間関係が持てるわけではありません。自らの仕事において貢献に焦点を合わせることで、良い人間関係が持てるのです。

 仕事との関係において成果がなければ、温かな会話や感情も仕事においては無意味で、貧しい人間関係のとり繕いにすぎません。逆に関係者全員に成果をもたらす関係であれば、多少失礼な言葉があっても人間関係を壊すことはないのです。

 部門ではなく組織全体の成果に注目し、自らのスキルと組織全体の目的との関係について考えるよう、習慣化していきましょう。

 次回は『人の強みを生かす』についてです。