『起業家戦略には四つある。総力戦略、ゲリラ戦略、ニッチ戦略、顧客創造戦略である。』
P.F.ドラッカー,チェンジリーダーの条件Part5・4章

四つの戦略は、いずれか一つを選べというものではありません。二つ、時には三つを組み合わせて、一つの戦略とすることができます。それぞれに特徴があります。限界もあり、リスクもあります。
① 総力戦略―市場の支配を目指す
総力戦略は、最高の起業家戦略とされています。必ずしも、大事業になることを目指す必要はありませんが、市場の支配を目指す必要があります。
この戦略はギャンブル性が強いですが、成功すれば成果は莫大です。いっさいの失敗は許されず、チャンスが二度とない辛い戦略です。しかも、イノベーションとしては成功しても、十分な資源を投入しなめれば、失敗します。事業としては成功しても、追加資源を投入しなければ失敗に終わってしまいます。
多くの場合は他の戦略をとるべきで、それは、リスクの問題ではなく、必要なコスト、努力、資源に見合うほど、大きなイノベーションの機会があまりないからです。
② ゲリラ戦略―創造的模倣戦略
この戦略は模倣です。起業家は、すでに誰かが行ったことを行います。しかし、最初にイノベーションを行った人よりも、そのイノベーションの意味をより深く理解しているので、より創造的です。
この戦略は総力戦略と同じように、トップの地位を目指しますが、リスクは小さいのです。
創造的模倣を行う人が動き出す頃には市場が確立し、製品が市場で受け入れられています。それどころか、最初のベンチャーが供給できる以上の需要が生まれています。最初にイノベーションを行った人が全てのことを行い、市場を独占することは滅多にありません。創造的模倣戦略は他人の成功を利用します。
しかしそれは、新しい製品やサービスを導入した者の顧客を奪い取ることで成功するのではありません。彼らが生み出しながら、放っておいた市場を相手にします。すでに存在している需要を満たすのであって、需要そのものを生み出すのではありません。
この戦略には、特有のリスクがあります。それは、リスクを分散させようとして、誤って、エネルギーを分散させる危険があります。状況を誤解し、種類を多くしてしまい、限られた資源を分散してしまうことです。
※続きは次回掲載させていただきます。