『企業家は体系的にイノベーションを行わなければならない。(中略)イノベーションの体系とは、具体的、処方的な体系である。(中略)具体的には、イノベーションの機会は七つある。』
P.F.ドラッカー,(引用元:イノベーションと企業家精神・第2章)

●イノベーションを起こす七つの機会
❶予期せぬ成功と予期せぬ失敗を利用する
❷ギャップを探す
❸ニーズを見つける
❹産業構造の変化を知る
❺人口構造の変化に着目する
❻認識の変化をとらえる
❼新しい知識を活用する
❼新しい知識を活用する
発明発見という新しい知識に基づくイノベーションは、企業家精神のスパースターです。たちまち有名になりますし、お金にもなります。これが一般的にイノベーションといわれているものです。知識によるイノベーションは、実を結ぶまでのリードタイムの長さ、失敗の確率、不確実性(リスク)、付随する問題などがほかのイノベーションと大きく異なります。さすが、スーパースターらしく、気まぐれであってマネジメントが難しいのも事実です。
○知識によるイノベーションの条件
知識そのものに加えて、社会、経済、認識の変化など、全ての要因を分析する必要があります。その分析によっていかなる要因が欠落しているかを、明らかにしなければなりません。
例) ライト兄弟
彼らは原動機による有人の飛行機をつくる上でいかなる知識が必要かを徹底的に分析した。次に情報を集め、理論的に検証し、実験することによって、補助翼や主翼の形を定める上で必要な理論を得た。一方、当時飛行機の発明者となることが期待されていたサミュエル・ラングレーは、ライト兄弟よりも科学者としてはるかに力量をもっていた。彼はすでに開発していたガソリンエンジンを無視し、蒸気エンジンにこだわった。そのため彼の飛行機は、飛ぶことはできてもエンジンが重すぎて何も積むことができず、パイロットさえ乗せられなかった。分析を行わなければ、欠落している知識が何かはわからない。したがって分析を行わないことは、失敗を運命付けるに等しい。サミュエル・ラングレーのように失敗に終わるか、誰かほかの者に機会を与えるにすぎないことになる。
○分析の必要性
イノベーションのための分析は、当然のように思われます。しかし実際には、科学的あるいは技術的なイノベーションを起そうとする者がそのような分析を行うことは稀です。なぜならば、科学者や技術者は自分がすべてを知っていると思い込んでいるからです。知識による偉大なイノベーションの多くが、科学者や技術者よりも素人を父としあるいは祖父とする結果になっているのはこのためです。
ほかのイノベーションはすでに起こった変化を利用します。すでに存在するニーズを満足させようとします。ところが、知識によるイノベーションでは、イノベーションそのものが変化を起こします。それはニーズを創造することを目的とします。顧客が受け入れてくれるか、無関心のままでいるか、抵抗するかを事前に知ることはできません。確かに例外はあります。癌の治療薬を開発する者はどれだけ受け入れてもらえるかなど気にしなくてもいいですが、そのような例外は多くはありません。他のイノベーションでも富を手に入れることはできますが、新知識によるイノベーションでは、名声まで手にすることができるのです。
