『事業が成長する通常の原因は事業上の成功である。成長の正常な原因は有能なマネジメントである。』

P.F.ドラッカー,現代の経営【下】第18章
代表取締役 瀧野 雅一

 成長とは、成功の結果です。良い仕事をしているからこそ企業は成長し、製品は需要に適応します。企業は成長することによってのみ、顧客のニーズに応えることができます。顧客の全国展開に成功し、自社の製品を必要とすれば、それだけの理由で全国的な販売網を持つ企業とならざるを得ないのです。

・企業規模の4つの段階
①小企業

 社長と従業員の間に、マネジメントの階層が一つ存在します。工場長や営業部長に部下がいれば、立派な小企業です。小企業では事業全体のマネジメントと販売や生産など、特定の機能のマネジメントの両方を行うことができます。したがって、『目標の設定』と『業務の遂行』のそれぞれの専任者を必要としません。

②中企業

 組織に関わる問題を解決できないことで、しばしば深刻な状況をもたらすこともあります。中企業と小企業の違いは、『目標の設定』と『業務の遂行』の専任者が、必要となることです。したがって、トップマネジメントと経営管理者との関係が課題となります。

 小企業としてマネジメントするか、中企業としてマネジメントするか、いずれを採用するかを決定する必要があります。小企業は、機能別組織として組織できます。機能別組織の部門長をトップマネジメントに直属させることも容易です。中企業になると、連邦型組織(社長コラム44参照)の適用が可能となり、その利点は大きいですが、専門職と部門長の関係、部門長とトップマネジメントの関係が検討を要する問題になります。専門職・部門長の目標と事業全体の目標との関係も、検討が必要です。

③大企業

 大企業の特徴は、トップマネジメントの仕事(目標の設定・業務の遂行)の一つはCEOのチームによって遂行することになります。業務の遂行に関わる仕事や目標設定に関わる仕事もあまりに大きため、何人かで分担することが必要となります。大企業では連邦型組織が有効とされています。したがって、トップマネジメントと各事業部長との関係が重要な問題となります。

④巨大企業

 巨大企業の特徴は、トップマネジメントの仕事の双方をチームによって行うことが必要になり、連邦型組織の原理によって組織する必要があります。

・中小企業の抱える問題

 規模が小さすぎて、必要な経営管理者を持つことが容易ではありません。なぜなら、複数の仕事をこなすことや、大企業と同じくらいの能力を求められるからです。そして何より、中小企業は一流の経営管理者が魅力を感じるには小さすぎます。一流の人たちに対し、大企業の低い地位ほどの報酬さえ払えません。かといって、必要な経営管理者を自ら育成することも容易ではありません。

 もう一つの問題は、同族であることに由来します。上席のマネジメントの地位はしばしば同族によって占められてしまいます。能力のない者に地位を与えるという慣行がなければ問題ありません。そうでなければ、一族以外の有能で意欲のある人がやる気を失い、会社を辞めてしまいます。辞めないまでも仕事をやめます。全力を尽くさず、無難な仕事しかしなくなります。高給を支払うだけであれば、出費だけで済みます。一族以外の優れた者をさしおいて営業部長にしてしまえば、市場を失い、最も必要とする経営管理者までも失ってしまうのです。