『重要なことは、正しい答えを見つけることではない。正しい問いを探すことである。』
P.F.ドラッカー,(引用元:現代の経営【下】第28章

意思決定をする時は、問題を解決しようと答えを出すことに集中してしまいます。しかしそれは、間違った焦点の合わせ方です。問題の解決だけを重視する意思決定は、戦術的な意思決定です。「どちらが安く済むか」など、合理的に判断をすればいいのです。
しかし、重要な意思決定、すなわち大きな意味を持つ意思決定は、戦略的な意思決定です。戦略的な意思決定には状況を把握することが必要です。ときには、状況を変えることさえ必要なのです。
○戦略的な意思決定
・ 事業の目的や手段について
・組織に関わるもの
・大規模な資本支出
・販売要員の訓練
・工場のレイアウト
・販売地域 など
戦略的な意思決定では範囲、複雑さ、重要さがどうであろうとも、初めから答えを得ようとしてはいけません。重要なことは、正しい答えを見つけることではありません。正しい問いを探すことなのです。間違った問いに対する正しい答えほど、危険とはいえないまでも役に立たないものはありません。
○複数の解決案の作成
あらゆる問題について、複数の解決案を作成することが原則です。解決案が一つしかない場合には意思決定をする必要がないからです。
「世の中に緑か赤しかない」といえば、誰でもおかしいと思うはずです。「緑か赤か」という考えと、「緑か非緑か」との混同がよく見られます。「緑か非緑か」というのは、全てを取り上げているのに対し、「緑か赤か」は数多くの色から、二つを取り上げているに過ぎません。
「白か黒か」という問題設定には、あらゆる色が含まれているものと想定してしまいます。あらゆる色が白か黒であるわけではありません。「白か黒か」という時、単に両極端についていっているだけであるにもかかわらず、あらゆる色についていったつもりになってしまいます。
利益を価格とコストの差と考えてきたために、利益率を上げるための唯一の方法は生産コストを削減することであると思い込んでしまいます。生産を外部委託したり、製品ミクスを変えることを思いつきません。
複数の解決案を考えることこそ、それまで当然のこととしてきた前提に光を当て、調べ、その有効性を調べざるをえなくするための、唯一の方法です。
意思決定とは問題を理解し、分析し、判断し、リスクを冒し、成果をあげる行動に至るまでのプロセスです。今後、経営管理者はますます戦略的な意思決定を行うようになります。そして、直感による戦術的な意思決定の能力に依存することは、できなくなるのです。