『未来を築くために、まず初めになすべきことは、明日何をなすべきかを決めることではなく、明日をつくるために今日何をなすべきかを決めることである。(中略)出発点としては、ビジョンを実現すること、すなわち未来を発生させることである。』
P.F.ドラッカー,(引用元:チェンジリーダーの条件 Part5 第1章)

将来どんな製品やプロセスが売れるかを予測しても意味はありません。予測は予測でしかないからです。大切なのはどんなビジョンを実現するかを決意し、そのビジョンの上に新たな事業を創出して、現状とは違う事業を創り出すことなのです。
○ビジョンを実現する
未来を発生させるということは、新しい事業を創出し、新しい社会についてのビジョンを事業として実現するということです。大きなビジョンである必要はありませんが、現在の常識とは違うものであることが重要です。「未来の社会はどのようになるべきか?」との政治家的な問いではなくて、「市場の変化の中で、わが社の望む事業が経済的成果を継続的にあげられるか?」との問いが必要です。
○天才の創造性はいらない
新しい事業にはある程度は誰にでもできることが必要です。想像力に富むビジョンの方が成功の確率が高いわけではありません。平凡なビジョンが、しばしば成功します。未来において何かを起こすには、進んで新しいことを行わなければなりません。したがって、意味のあるのは、才能ではなく、勇気の方なのです。新たに始めることは、うまくいくかもしれませんが、うまくいかないかもしれません。むしろ、うまくいかない方が、多いかもしれません。しかし、「うまくいかないかもしれない」というモチベーションでは必要な努力も持続するはずがないのです。一方で、失敗するのは確実なもの、リスクのないもの、と思っていることの方が多いかもしれません。
○ビジョンを実現する責任
企業で働く人は狂信的であることはもちろん、熱狂的であってもなりません。『達成する』ことを望めば『達成する』わけではないからです。たとえ『達成する』ことに最大限の努力を傾けたからといって、必ずしも『達成する』ものではないことも認識しておかなければなりません。あらゆる企業がビジョンを必要とするわけではありません。しかし、明日は必ず来ます。そして、明日は今日とは違います。現時点で最強の企業といえども、過去のマネジメントのビジョンや勇気や努力のおかげでしばらくは存続しえます。しかし、未来に対する備えを怠ったならば、苦境に陥ります。個性を失い、リーダーシップを失います。残るのは膨大な間接費だけとなってしまいます。新事業を立ち上げるリスクを避けるために、起こったことに驚かされるという、はるかに大きなリスクを負うことになってしまうのです。