『組織にとって、適切な規模を知ることくらい簡単なことはないように思われる。八百屋は小さく、GEやドイツ銀行は大きい。だが、ことはそれほど簡単ではない。』

P.F.ドラッカー,(引用元: マネジメント【下】第54章
代表取締役 瀧野 雅一

 通常、組織の大きさを測る物差しは従業員数です。アメリカ政府の中小企業局は、小企業の定義を300人以下としています。従業員数は重要で、1000人を超えると人事管理が必要になり、小企業には必要のない経営政策が必要になります。しかし、人数はそれほど多くなくとも、中企業と見るべきものがあります。
例)12カ所ほどの支社を持ち、300人のコンサルタントを擁するコンサルタント会社は、人数の上では小企業です。しかし、必要なマネジメントに関しては大企業です。

 これに対して、人数こそ大勢いますが、実質的には小企業、あるいはせいぜい中企業と見るべき企業があります。
例) 一種類の保険を販売する保険会社です。従業員は4000~5000人います。そのほとんどは営業マンです。残りの多くは支払い事務です。しかし、企業の特徴としては小企業とあまり変わりません。マネジメントの階層も2つしかありません。本社のトップマネジメントと14の営業所長です。一見しただけでも、すでに小企業です。

 つまるところ、規模とは総合的なもので、規模を知るには、従業員数、売上高、付加価値、製品、市場、技術、さらには、産業構造や市場シェアを見なければなりませんが、いずれも単独では決定要因にはなりません。しかし、総体としての規模をかなり正確に示す一つの基準は、マネジメントとその構造なのです。

◯大企業か、中企業か、小企業かの判断基準
・小企業

 社長自身が、書類を見たり人に聞いたりしなくても、中心的な人材を掌握しています(何を担当しているか、どういう経歴か、どういう仕事をしてきたか、どういう仕事ぶりか、何ができるか、何ができないか)。あるいは知っていると思っています。つまり、小企業では中心的な人材は少数です。15人を超えることはありません。一人の人間で本当によく知ることのできる人間の数が、この15人という人数です。

・中企業

 トップ一人ではもはや、組織内の本当に重要な人間全員を識別し、知ることはできません。そのためには、3人ないし4人の人間が必要です。中企業のトップは、中心的な人材の名前を聞かれると、トップマネジメントの同僚を何人か呼び、相談して答えます。中企業では、成果を左右する存在として知られるべき中心的な人材の数は40〜50人になります。

・大企業

 大企業になると組織図や記録を調べなければ、決定的に重要な人材が誰であり、どこにおり、前に何をやり、現在何をしており、これからどのような道をたどることになりそうなのかは、全くわからなくなります。

 これらの判断基準は絶対でも完全でもありませんが、規模の違いを表す指標として、マネジメントとマネジメントの構造に焦点を合わせています。そこで、マネジメントは大企業のためで、小企業はマネジメントに関心を持つ必要はないと思われがちです。しかし、小企業は大企業以上に組織的かつ体系的なマネジメントをもたなければならないのです。

※次回以降に小企業のマネジメントについてです。