『単純さと複雑さはともに必要である。単純さと複雑さは事業を反対の方向に引く。この二つを対立させてはならない。調和させなければならない。共通の軸によって多角化を一体化することこそ、トップマネジメントの仕事である。』

P.F.ドラッカー,(引用元:マネジメント【下】第56章
代表取締役 瀧野 雅一

 いかに集中が望ましいとしても、多角化との調和が必要です。そうしなければ、過度の専門家に陥ってしまいます。同時に、いかに多角化が望ましいとしても、あるいは避け難かったとしても集中が必要です。そうしなければ分裂と分散に陥ってしまいます。

 もちろん、下限に近づくほどマネジメントしやすくなります。シンプルであれば組織の全員が、自らの仕事を理解し、自らの仕事と全体の成果との関係がわかりやすくなります。期待を明確に規定することもできますし、成果を評価測定することも容易です。複雑でなければ問題も少なくてすみます。

 ところが、複雑になれば、原因を突き止め、適切な改善策をとることも困難になります。複雑さはコミュニケーション上の問題を起こします。それだけマネジメントの階層が増え、調整役が必要となります。書類と手続きが増え、会議が多くなり、決定が遅れます。

○多角化を調和させ、一体性を保つための方法
  • 共通の市場のもとに、事業、技術、製品、製品ライン、活動を統合し、それによって高度に多角化しつつ一体性を保つこと
  • 共通の技術のもとに、事業、市場、製品、製品ライン、活動を統合し、それによって高度に多角化しつつ、一体性を保つこと
○複雑さの限界

 トップマネジメントが、事業とその現実の姿、そこに働く人、経営環境、顧客、技術を自らの目で見、知り、理解することができなくなり、報告、数字、データなど抽象的なものに依存するようになったとき、組織は複雑になり過ぎ、マネジメントできなくなったと見るべきです。それらの情報は全て過去のもので、人によって編集されたものだからです。完璧にもできるし、リアルタイムにもできます。

 しかし、そこから得られるものは、トップマネジメントが、問いかけを行ったものだけです。報告とは全て編集されたものです。意味のある事態とは、報告システムに乗らないものです。数字になった時には、おそらく遅すぎます。問題になってから問題に気づくだけです。

 したがって、まず最初に検討すべきことは、「ミッションの実現に向けて目標を達成し、活力をもって繁栄し続けるうえで必要最小限の多角化は何か」です。

 そして、同時に考えることが、「マネジメントしうる最大限の複雑さはどの程度か」です。答えは、この二つの問いへの中間にあるのです。