『規模の誤りは、組織にとって体力を消耗させる業病である。(中略)治療は可能だが、簡単でもなければ、楽でもない。この病にかかったものの多くは、必要な薬の服用を拒む。』

P.F.ドラッカー,(引用元:マネジメント【下】55章
代表取締役 瀧野 雅一
○規模のマネジメント

 規模が不適切になる原因は、いろいろあります。ある産業では、企業の存続に必要な最小規模がすでに大きい場合があります。現代の技術のもとでは、小さい鉄鋼会社であることは小軍隊であることと同じように、存続が不可能です。小さい石油精製会社であることや、小さい石油化学会社であることも、ほとんど存続が不可能です。これらの産業で、小企業や中企業が存続していけるとすれば、巨大企業との競争にさらされることのないニッチにおいてのみです。

 逆にアメリカの出版業では、大規模で生きていけません。一般書の出版は、全てが小企業か中企業です。中企業の域を超えた途端に、管理費や販促費、あるいは営業部員が急増し、採算が取れなくなります。(ただし、技術書や辞書の出版は大企業でも成功している)

 さらには、大企業と小企業は繁栄できるが、その中間の企業では規模が不適切な産業があります。

(例)アメリカの国内航空アメリカン航空やTWA(トランス・ワールド・エアライン)などの大手航空会社は、立派にやっています。西海岸のPSA(パシフィック・サウスウエスト・エアラインズ)などのローカル航空会社も、立派にやっています。ところが、ウエスタン航空、ノースイースタン航空などは苦境にあります。中規模の国内航空会社は、幹線航空会社の収入を上げるには小さすぎ、ローカル航空会社の経済性を発揮するには大きすぎます

○規模と地域社会

 規模についての最大の問題は、組織の内部にあるわけではありません。マネジメントの限界でもありません。それは、地域社会に比較して大きくなりすぎることにあります。「どのように必要であろうと、地域のことを考えたらできない」というセリフが聞かれるようになれば、その地域ではもはや大きくなりすぎたと認識するべきです。

 規模そのものは、大きくないかもしれません。問題は相対的な大きさです。企業城下町は企業そのものにとっても地域社会にとっても不健全です。そのような企業にとって最低限必要なことは、その地域ではそれ以上事業を拡大しないことです。これは社会的責任ではなく、事業上の責任です。

 市場や活動に比べて小さすぎるにしても、逆に環境、地域、経済に比べて大きすぎるにしても、規模の不適切さは、トップマネジメントの直面する問題のうち、最も解決が困難です。自然に解決される問題ではありません。勇気、真摯さ、熟慮、行動を必要とする問題です。

 不適切な規模の組織には、肥大化した分野、活動、機能があります。多額の費用や努力を必要としながら、あまり成果を上げられない分野があります。不適切な規模の組織におけるマネジメントは、大きくなりすぎた機能を支えられるように売り上げを増やそうとしますが、M&A、売却、分割なども選択肢に入れておくべきなのです。